たとえハロウィンにお菓子をもらえなかったとしても、いたずらする相手がいない。
いっそお菓子にいたずらをしてしまおうと思う。
しけたハロウィン
2016年10月31日、一人でおかしを11種類買ってきた。 ふつうの大学生ならみんなで集まって誰かの家で盛り上がる日である。 お菓子を買ったコンビニの店員も、僕のことをうかれ大学生だと思ったに違いない。
ところがどっこいただの孤独である。ひとりでお菓子をぜんぶ開ける。ジャック・オ・ランタンですら口角が下がるハロウィンである。
「おかしにいたずらする」というのは新しいことばである。
この言葉はまだ誰も使ってないので、意味は僕が勝手にきめてしまってよい。
おかしにいたずらをすることを「おかしをしめらす」ということにしてもよかったのだけど、それだとハロウィン以外にも各地でおかしはいたずらされていることになってしまう。
そこで「おかしに『いたずら』と刻む」ことをいたずらすることとした。
いまになって、「肉」と刻んだほうがいたずらっぽいなと思った。(いたずら=額にマジックで肉と書くこと、だろう。)
レーザーカッターを使って正確にいたずらをしている。
念のため言っておくと、レーザーカッターはいたずらをするマシンではなく、レーザーによる物体の加工をするマシンである。
cre8base KANAYAMA(クリエイトベースカナヤマ)という施設でレーザーカッターを使わせていただいた。
こいつを使えばパソコンで書いた「いたずら」の文字が正確にゴシックで刻まれる。
むかしパソコンが誕生するとき、使い道がないので一般の人には利用されないと考えられていたというが、未来の世界はこうである。使わないどころか、チョコペンで済むことをわざわざ電気を使ってやっている。
未来というものはわからない。
今回はいたずらをして終了ではなくて、そのお菓子を食べて味を調べる。「スタッフがあとでおいしくいただきました」のところがメインである。
こうやって言うと僕がお菓子で遊んでるみたいになるが、遊んでるわけではない。調理である。
いたずらされたお菓子を食べ比べ
いたずらがすんだお菓子を並べてみた。あまりにもきれいに「いたずら」と刻まれているので写真をあとで加工したみたいに見える。
フォトショップを使い始めて1週間、みたいである。
レーザー加工とはつまり表面を焦がしているわけなので、いたずらされたお菓子は味が変わっている可能性がある。
焼いた海苔がうまいように、味によってはいたずらが肯定されるお菓子もあるかもしれないのだ。
結果からいうと味はそれほど変わらなかった。変わらなかったものから順に紹介しよう。
ほとんど変わらなかったもの
ふつうすぎて思い出がゼロ。
レーザーで溶けるかと思ったけど、そうでもなかった。
味も普通で、ただの電気のむだづかいである。
あまりにも味に変化がなかったので不満な表情になってしまった。
これだから期待というものは怖い。
この硬さが懐かしい。
なつかしいけどおかしい硬さである。相変わらず。
ほとんどキャラメルを食べたことがなかったので、単純にキャラメルのうまさに感動してしまった。
ちょっと変なもの
ちょっとだけ香りがおかしいけど、ほとんど問題なく食べられる。
人間でたとえると銀髪のやつである。中はあんがいふつう。
これもややにおいに違和感があるけど、食べるとカレーの風味がすべてを粉砕するのでまったく気にならない。
力で異臭を捻りつぶす暴力的なおかしである。ビッグカツはレーザー加工に勝つ(だじゃれです)。
ダメなもの
焼肉屋のアミを食ってるみたいである。
うまい棒のサクサク感が逆に炭を連想させる。
すかすかの中身全体に焦げのにおいが移ってしまっていて、どこをとってもうまくない。うまい棒が闇に落ちた。救いようがない。
はじめのほうは問題ないのだけど、だんだん奥のほうから焦げた味が広がってくる。
にが味のバクダンである。刻印も目立たないし、人に仕掛けるならこれだ。
硫黄くさい。
アンハッピー。
(番外)文字を刻めないもの
表面の砂糖のつぶのせいか、うまく印字できなかった。バリアをまとっている。
そもそもいたずらしにくいお菓子もある。
たのしいハロウィン
実は食品のレーザー加工においては、味が変わることよりも変わらないことが重要である。
味が変わらなければ、表面に様々な模様を描いても問題なく食べられるからだ。贈り物とかに使える。
僕もこんどだれかの誕生日に、蒲焼さん太郎に文字を刻んでべたべたのメッセージカードとしてプレゼントしたい。
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