大学生の自由研究
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2015/01/08
書いた人:江坂 大樹

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元日、受け取る年賀状。


気になるのは、その紙面に描かれている絵ではない。絵を描くのに使われた原料だ。そこにはどんな危険が潜んでいるかわからない。


なので今回は誰もが安心して受け取れる、完全無添加のオーガニック年賀状を作りました。








世間に蔓延る疑いのまなざし


2014年は、ちゃんと働いていると思っていたある県議員が実はうそをついていたり、カップ焼きそばにゴキブリが混入したりした事件が世間を騒がせていたと思う。


でもそうなると困るのだ。僕が送る年賀状まで、「知らないインクが使ってあるから信用できない」と言われて受け取ってもらえなかったら、新年早々悲しいではないか。


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だから神社へ行った


神社へ行ったのは神様に慰めてもらうためではない。年賀状を作るためだ。


ここで、僕が作り上げた、新年のあいさつとともに安心と安全をお届けする「オーガニック年賀状」の全貌を公開しよう。



原材料:神社


現代の人々は、人(とあと機械)の手が加わっているものほど疑う傾向があるような気がする。カップめんは危ないけど、目の前で調理している屋台の焼きそばは信用に値するから高くても買うのだ(きっと)。


だからもっとも安全で信用できる年賀状とは、できるだけ人の手が加わっていない天然の原料で描かれたものということになる。


自動車が飛び交う町中でできるだけ人の手が加わってないといえば、神社。そう、僕のオーガニック年賀状は、すべて神社にある原料で描かれている。ほら、これだけで安心感が生まれてきただろう。


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ぼくのパレット


僕が神社へ持って行ったのは、はがきとバインダーのみ。筆やペンは持って行っておらず、インクとなるのは神社にあるもの。つまり、年賀状を描き上げるのは僕ではなく自然そのものなのだ。僕は自然とはがきをつなぐ筆のような存在でしかない。


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ぼくはふで


さらにはがきとバインダーはどちらも木からできているので、それらの原料となった木が神社にある木の子孫だと考えると、今回僕が使ったもの、すなわち僕を取り囲み年賀状を描き上げたものは、神社そのものである。どうだ、安心できるだろう。



本邦初公開の作業工程


これだけでは全貌が明らかになっていなくて、理想の安心には及ばないという人もいるだろう。しかし僕はオーガニック年賀状の作業工程を秘密にして、なにかを隠すということはしないので安心してほしい。やましいことなんてなにもしていないから隠す必要なんてない。


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途中、木の根元に埋まってた謎の瓦を掘っていた事も隠さない


それではまずは完成した年賀状をご覧いただこう。


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メイド オブ 神社


パッと見はコンビニでも売られていそうな安直なデザインだが、その温かみのある線と色合いはすべて神社でできている。


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こんなふうに


羊のやわらかな輪郭を生み出したのは泥だ。そのへんに落ちていた湿った土を短くて持ちやすい木の枝の先に付け、こするようにして線を引いていく。こすりながら線を引く感覚は、同じ木の枝でも砂場へのお絵かきより車へのいたずらに近い(やったことないけど)。


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ぼくのアトリエ


「あけましておめでとう」の文字は、ペンを使ったんじゃないかと疑われそうなくらいにはっきりと描かれているが、ここも大丈夫だ。これも落ちていた木の実の汁を使っているので危険はない。


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木の枝で実を突き刺して


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枝に付いた汁で描く


木の枝の先にはわずかな汁がこびりつくだけなので、この方法だと文字は1画ずつしか書けない。その分1画につき1木の実を使っているので、使いまわしの心配がない。新鮮なものを逐一使用している。これも安心につながる重要なポイントの一つだ。


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快く受け取ってもらえることを信じて


この写真から服装が変わる。いんちきしているといって疑われそうなので正直に言うと、寒くてたまらなかったのでわざわざ一回家にダウンを取りにかえった。(瓦を脚で蹴って掘りたかったので靴も変えた。)


実は僕はこの前の日に、熱はないのにだるくて頭が痛く、しかも体中の節々に違和感があるという変な風邪をこじらせている。


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ウイルス無添加(たぶん)



こすってできている


お気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、オーガニック年賀状はとにかくこすって描かれている。


もし神社が擬人化されて神社自身が年賀状を描くとしたら、その神社が筆をもつことは間違いであることが明らかになった。手でこするのが正解。


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こうなるはずである



続いて残りの部分を紹介しよう。


背景の緑色の部分は草原を表現していて、ここには神社に生えていた草を用いている。草原を描くのに草を使うなんてなにかのギャグみたいだ。この間炭火で焼き芋を作ろうとしたときは、焼きすぎて芋が炭になった。炭で炭を作った。


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草をこすって草を描く


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草の前に木の葉も試したが、水分が足りてないのでまったくお話にならない


羊の胴体部分を彩るのには、ちょうどいい具合に刈り立ての羊毛の、3週間くらい風呂に入ってない感じの色を持つ木の実を使った。


実際に羊は風呂には入らないで汚れたままなので、その毛には何が潜んでいるかがわからず危険だ。そんな羊のリアルな色合いを表現してあるが、僕の年賀状の場合なにで汚れているかがわかっているので安心できる。


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木の実で汚してある


そして背景上部の初日の出と焼けた空は、それぞれ花弁とみかんでできている。


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花をこする


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みかんの写真は撮り忘れた(代わりにねこ)



完成、そして皆の手元へ・・・


このような過程を経て、ようやくオーガニック年賀状が出来上がるのである。ここで完成したオーガニック年賀状を改めてご覧いただきたい。


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これが、安心して受け取れる「オーガニック年賀状」


作られた過程を知ることで、そのはがきが持つ1つのストーリーが、否応なしに体に入り込んでくるだろう。はがきを受け取った瞬間に、その1枚に目いっぱいちりばめられた安心感がほとばしるのだ。


これほどまでに徹底して安心安全を突き詰めた年賀状が、受け取ってもらえないはずがない。僕自身納得の出来である。2015年もいい年になりそうだ。


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ちゃんと人数分コピーしてポストに入れました






安心してもらうのは大変だ


1枚のオーガニック年賀状を作るのにほぼ丸1日かかったので、オリジナルをスキャンしてそれを印刷した年賀状を皆に送った。結局出どころのわからないインクを使ってしまったけど、気持ちだけは届いただろう。


やはり安心をお届けするのは大変なのだ。世間が見えないところでいんちきをしてしまうのも仕方ないと思えてきた。


いいことなのか悪いことなのかわからないけど、少しいんちきに対してやさしくなった気がする。


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今年もよろしくお願いします





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