8月1日と2日の2日間、東京ビッグサイトで「Maker Faire Tokyo 2015」が開催された。
Maker Faireは、いろんな工作物があつまるものづくりの祭典である。普段みることのないものがたくさんあって「なんだこの工作」となるこのイベント、行っていろいろ見てきた。
とにかくいろんな作品がある
僕の知り合いにはMakerFaireを知っている人はほとんどいなくて、知っているか聞いたら「企業の合同説明会?」というこたえが返ってきたこともある。
そんな人のためにMakerFaireがどんなものか簡単にいうと、工作が好きな人が、作ったものを持って来て展示しているイベント、という感じである。ほとんどなんでもありである。
MakerFaireに出展される工作の幅は広くて、手芸からロボットまである。なかでも電子基板を使った工作は特に多い(というかほぼ電子基板は使ってある)。
そんななか、僕はできるだけ単純でわかりやすい工作ばかりを見てきた。とくに意識をしてそうしたわけじゃないけど、結果的にそうなる形となった。
去年もこのMakerFaireには来ているのだけど、そのときに好奇心で電子工作に近づいたらたまたま電子工作のくわしい話を長々とされてしまって困った、という(僕の中で)有名なエピソードがある。そのせいでそうなったのかもしれない。僕は電子工作をほとんどやったことがなくて、いまだに手を付けられないでいる。
おもしろい工作の数々
僕はお面が好きなので、一番最初に見たのはお面だった。
なんだか原住民がかぶっていそうなお面があった。これはシンプルにフェルトでできているので軽い。
これは「マルノカミ」というキャラクターがもとになっている。それをなんでお面にしたかと聞いたら、「面白そうだから」というニュアンスの回答をもらえた。また、現在はこのお面を使ってなにかをやろうと考えている段階らしい。フェルトみたいに構想もふわふわである。
工作にはさまざまな理由があると思うけど、MakerFaireに出展している人の大半はやっぱり「面白そうだ」という発想が原動力になっている気がする。何も考えていないといえばそうかもしれないけど、いい意味でいえばちびっこと一緒なのである。
これはサングラスの内側に赤いLEDとボタン電池がテープでとめてある。作りは簡単だけど、かけるだけでほぼターミネーターになれる。構造を覚えれば、家に帰って100均の材料だけで作れそうなところがすごいだろう。この文章はつまり「100均に行けばターミネーターになれる」と言っているのですごい。
スカイネットは100円ショップから生まれたのかもしれない。
これは柿の種をかっこよく飾るためのアイテム。柿の種の下についている白い部分がポイントで、これが3Dプリンタで柿の種のサイズぴったりに作られている。本来自立できないものを立たせること(この場合座るか)ができるので、Makerはやはりすごい。
「それいる?」とか言ってはいけない。そういうことではないのだ。だって、これはおもしろいだろう。いらないかもしれないけど、おもしろいからいいのだ。僕はおもしろい。
写真ではよくわからないかもしれないが、段ボールで作ったでかい手が置いてある。
僕はよく段ボールでいんちき工作をするので、この段ボール工作がたくさん置いてあるブースが一番興奮した。興奮しすぎてしゃべる声もかなりでかくなっていたと思う。だけど周りにはそれぞれ興奮して声がでかくなっている人がいっぱいいて、もはや会場自体が興奮しているので、特に気にしなくても大丈夫である。
段ボールマンさんはここ一帯を取り仕切っていた人で、段ボールを使って制作をしている人を集めて段ボールの魅力を世に伝える活動をしている。平日はふつうに働いていて、休日にその活動をしているようだ。週末アイドルである。
実は段ボールマンさんのメガネは段ボールでできている(ように見える)のだが、これは普通のメガネに段ボールで作ったフレームをテープで貼り付けて作ってある。段ボールマンさんも自分で「こんなテキトーな感じだけど」みたいに教えてくれたけど、僕も段ボールはいんちき工作に向いていると思うのでむしろうれしかった。
MakerFaireには趣味でやっているものを出展する、みたいな人は結構いて、すごいことをしている人でも普段は意外とふつうという感じだったりする。もしかしたらあなたのお父さんも、こっそりMakerFaireに出展していたかもしれない。
こんなんでいいのか
僕が好きなウェブサイト「デイリーポータルZ」のライターの方々も数名作品を展示していた。
これはライターの方が自らの手で岩から掘り出して、公園に置いて娘に拝ませたという仏像。
これはリカちゃんを模して段ボールで作った人形「ダボちゃん」。
正直、これらの作品をはじめて見たとき「こんなんでいいのか」と思った。
もちろんこれらはただ作っただけではなく、背景にはちゃんとしたストーリーがあってそれが記事にされているのだけど。それにしても「こんなんでいいのか」となる。
MakerFaireはお祭りなので、きっとこんなんでいいのだ。
手相までいじれる
あまりわけのわからない作品ばかり紹介すると、MakerFaireがただのふざけたイベントで、近所のお祭りと同じレベルだと思われるといけないので、ちゃんとしている作品も紹介しようと思う。
これは、なんと生地そのものにマイクになっていて、そこから音を奏でるというユニークな作品。仕組みはよくわからないけど、背中のあたりから音楽が流れていて、触れるとまさにジャケット自体が震えているのがわかる。
これはいままでとは違う音楽の聴きかたができるので、見たときすごいと思った。だけど同時に「買おうとしたら高そう」とも思った。実際高いだろう。というか絶対高い。
MakerFaireで売っているものは高いもの(すごいもの)と安いもの(ステッカーとか)の両極端になりがちである。
他にも生地自体に銅を縫い込んで、生地を銅線みたいに使えるというものがあった。服とかの好きな位置でLEDを光らせたいという人にはもってこいだろう。これも高そうなので僕はいらないけど。
これは、フォークやスプーンで食器などを叩くと、そのときに出た音を中央にあるマイクが拾って、即興で音楽に混ぜてくれるというもの。つねに鳴らした音が反映されていて、スピーカーからはずっとガチャガチャした曲が聞こえてきて楽しい。
作った人は、小さい頃に食器を叩くと怒られたという経験から発想している。だからこれは音と同時に食器を鳴らすことの背徳感を楽しむものでもある。
MakerFaireには小さい子供もたくさん来ているけど、子供がこれで遊ぶと家で真似をしてしまうかもしれないから、危険だ。だからちょっとおとな向けである。
最後にこれ。最近の3Dプリンタはすごくて、なんと手相を自在に書き換えられることができる、というところまできているのだ。
というのはさすがにうそで、これは3Dプリンタを改造して、好みの手相を筆で直接書き加えてくれるようにしたもの。簡単にいえば手に落書きをしてくれるマシンである。でも僕は最初本当に書き換えてしまうのかと思った。
僕は高さの調節を失敗して線が太くなってしまったので、落書き感が一層増した。
いままで3Dプリンタに手を入れたことなんかなかったが、入れるときはMRI検査のときみたいに「おれは改造されてしまうのか」という気持ちになる。MRI検査と違うのは、目的が本当に手相を改造するというところだ。
でもこれは濡れティッシュで拭けばもとに戻せるので安心である。
MakerFaireはおもしろい
どうでしたか。MakerFaireを知らなかった人や、全く興味がなかった人も、少しは気になったのではないだろうか。
もちろん会場にはもっとたくさんの数えきれないほどの作品が展示されていて、もっとガチガチの工作だってある。なのできっと誰でも1つはおもしろいと思える工作があるだろう。
僕は結局全体のほんの一部しか見れなかったと思う。15時ごろにはもう疲れてしまっていたのでもったいない。(午前中に築地市場なんかうろつくからだ。)
MakerFaireの初日は12時開場なのでそれまでは暇だけど、MakerFaireをめいっぱい満喫したい人は午前中のあいだはおとなしくしておいたほうがいい。
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